データサイエンスを駆使して企業や社会の課題解決に取り組む株式会社DATAFLUCTは、中国電力ネットワーク株式会社のオープンイノベーションプログラム「Co-Creation with Network」に採択され、「衛星データを活用した森林クレジット創出支援事業」の共創を開始します。
DATAFLUCTが持つ衛星データ活用や脱炭素事業の実績と、中国地方に広がる中国電力ネットワークの送配電設備や地域ネットワークというアセットを組み合わせることで、森林クレジット申請にかかるコストを大幅に削減しつつ、精度の高い推定を維持することを目指します。これにより、中国地方における適切な森林管理と森林クレジット創出、さらには企業によるクレジット活用が一体となった地産地消の循環モデルの構築に貢献していきます。
プロジェクトの背景:J-クレジットの課題と中国地方のポテンシャル
中国電力ネットワークは、電力の安定供給を担う一方で、地域社会の活性化にも貢献するため、オープンイノベーションプログラム「Co-Creation with Network」を実施しています。
現在、日本政府が認証する「J-クレジット」は、温室効果ガス削減(オフセット)の有効な手段として需要が高まっています。しかし、その創出や活用には煩雑な手続き、複雑な制度、そしてコスト面での課題が指摘されていました。特に、森林クレジットの創出や施業履歴管理には、森林の状態を定期的にモニタリングする必要があり、そのコストが大きな負担となっていました。
衛星データを使えば、広範囲の森林を一度にモニタリングでき、時間とコストを削減できる可能性があります。しかし、現状では人的測量や航空機LiDAR・ドローンによる測量に比べて精度に課題があり、一部のモニタリングを除いて国内の森林クレジットの方法論としては認められていません。
一方、中国地域は森林率が全国第2位の72.5%と非常に高く、豊富な森林資源を活かした森林クレジットの創出は、カーボンニュートラル実現に向けて極めて重要です。また、同地域は産業部門からのCO₂排出量が東京圏や関西圏と並んで高く、地域内で創出された森林クレジットを地域内の産業のニーズとマッチングさせる「地産地消」のモデルは、地域社会への価値還元、資産の有効活用、そして地域貢献という点で大きな意義を持ちます。
今回の共創は、「地域とともに発展を目指す」中国電力ネットワークと、「衛星を含む新たなデータの活用とアルゴリズム開 発を通じてカーボンクレジット市場の間口を広げ、活気あるエコシステムを創出する」DATAFLUCTの双方の思いが合致し、実現に至りました。
共創事業の概要:コスト削減と地域貢献の両立を目指す
本事業では、中国地域の森林を対象に、衛星データを活用したモニタリング手法を開発・検証します。これにより、森林所有者の負担を軽減しながら、少ない時間と低コストで森林クレジットを創出する可能性を探ります。
さらに、この取り組みは、地元企業にとっても大きなメリットをもたらします。地域内の森林で創出された森林クレジットを購入することは、自社のCO₂排出量オフセットだけでなく、地域の森林管理への支援という画期的な地域貢献手段となります。中国電力ネットワークが持つ地域内の強固なネットワークを活用し、この取り組みに賛同し、森林クレジットの需要を持つ企業との連携も積極的に開拓していきます。
共創パートナー募集:地域と共に森林クレジットを育む
既に協議を進めている中国地域の森林に加え、本取り組みに関心のある共創パートナーを広く募集しています。
供給者側(クレジット組成を検討中の森林組合・自治体、または社有林を保有する企業): クレジットの評価・組成に関する実証を共に行うことができます。
需要家側(森林クレジットの調達を検討している企業、特に中国地域に本社・事業所を持つ 企業): クレジット調達の支援も可能です。
森林クレジットの活用にご興味のある企業は、DATAFLUCTまでお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先:https://datafluct.com/contact
DATAFLUCTの衛星データ活用実績
株式会社JAXAベンチャーとして設立されたDATAFLUCTは、衛星画像解析における高度な技術と豊富な事業化実績を有しています。
2021年には、衛星データとGDPなどの地上データを組み合わせ、大気中の二酸化炭素濃度と経済活動を可視化するサービス(現在は「TOWNEAR」として提供中)を公開。
2022年には、水田由来のメタン排出削減を目的に、衛星データ分析による水田マッピングおよび稲作状況推定アルゴリズムを開発。
2023年には、衛星画像を利用した森林のCO₂吸収ポテンシャル算出ツール開発事業が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2023年「SBIR推進プログラム」に採択され、森林バイオマス推定の精緻化と低コスト化に向けた研究を開始しました。
これらの実績を活かし、DATAFLUCTは今回の共創事業を通じて、森林クレジット市場の発展とカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。