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2022.08.27

世界1500人の経営者は「サステナビリティ」をどう実現しようとしている?

 

2022年4月、Googleは企業のサステナビリティへの取り組みに関する調査結果を発表した。対象となったのは16ヶ国1,491人の企業の経営幹部。調査はコンサルタント会社「The Harris Poll」によって実施され、報告書には、企業のサステナビリティにおける優先順位付けや、取り組む上での課題についてがまとめられている。

アンケート結果によると、94%の企業が1つ以上のサステナビリティに関する取り組みを推進しており、ビジネスにおける優先順位が高まっていることが明らかになった。また、企業の予算における約10%がサステナビリティへの取り組みに割かれていることも明らかとなり、持続可能な方法で会社を成長させたいという経営幹部の姿勢が伺える結果となった。

近年、日本でも、SDGs(Sustainability Development Goals:持続可能な開発目標)への取り組みを推進する企業が増えている。しかし、世界の企業に目を向けてみると、より環境のことを真摯に考えて、企業方針を模索しているのも事実。参考になりそうな3つの企業のサステナビリティに対する取り組みを紹介しよう。

衣料品やアウトドア用品などを展開するアメリカの企業「Patagonia(パタゴニア)」は、環境に配慮した商品づくりで知られている。ファッション産業は製造過程で化石燃料を使用し、環境への負荷が大きいことが世界的にも問題視されているが、自社のウェブサイトにてこうした問題に言及し、業界が変化する必要があると訴求している。特に洋服に使用する材料の転換に注力しており、1993年から使用済みペットボトルからリサイクル・ポリエステルの製造に取り組んでいる。2022年度の商品ラインナップのうち94%がリサイクル素材で作られており、2025年までに100%を目指しているという。

スウェーデン発の音楽配信サービスの世界最大手の「Spotify」は、2021年のインパクトレポートで「気候変動」「多様性・公平性・帰属意識」「メンタルヘルス」「市民と地域への関与」の4つの分野でサステナビリティに取り組んでいることを発表した。気候への影響は配信サービスでは明らかになりにくいが、3億6,500万人のユーザーに気候危機を中心とした社会課題に対して意識変革を起こすことができると考え、「How to Save a Planet」というサステナビリティに関する情報を発信するオリジナルPodcast番組を公開するなど、ユーザーに行動を起こす取り組みをしている。

イギリスでの売上1位を誇り、日本でも人気の高いスコットランド発のクラフトビールブルワリー「Brewdog」は、2020年にカーボンネガティブを達成した。中長期的にカーボンネガティブを達成し続けるため、スコットランドに2050エーカーの土地を購入し、数年かけて100万本の木を植林し、CO2の削減に取り組んでいる。ほかにも、配達には1週間あたり500kgのCO2を削減できる電気トラックを活用するほか、2021年より循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」と連携してイギリス国内でボトル瓶の再利用にも取り組んでいる。

3社は一例として紹介したが、コーポレートサイトやインパクトレポートでサステナビリティに触れている企業は多く、優先度が高まっていることが読み取れる。その一方で、アンケートに回答した58%の企業が「組織内に偽善的なサステナビリティが存在し、誇張した表現をしたことがある」と回答した。こうした背景を受けて、経営幹部は「サステナビリティに対する取り組みのインパクトを測定できるツールがあれば透明性を拡大したい」と考えているという。

サステナビリティへの取り組みが進む中、諸外国では「グリーンウォッシュ」が問題視されている。グリーンウォッシュとは、環境に配慮していると見せかけているが、実態が伴っていない企業のマーケティング戦略のことを指す。たとえ悪意がなかったとしても、グリーンウォッシュが指摘された場合は企業にとっても大きなダメージとなるだろう。そこで役立つのがCO2の排出量を計測し透明性を担保することができるツールだ。世界の代表例を3つ紹介しよう。

「Klima」はベルリン発のカーボンオフセットができるサブスクリプションサービスで、現在75カ国で展開している。世界中のCO2排出量のうち72%が個人の消費行動に由来することから、個人の行動を変えることができれば、地球温暖化を解決する手段になると考えサービスを開始したという。アプリ内でライフスタイルに関する8つの簡単な質問に回答すると、年間のCO2排出量が計算され、カーボンオフセットしたい割合に応じて月額料金が案内される。月額の支払いで植樹や太陽光発電、調理用コンロの提供など、プロジェクトの支援を通してCO2排出を相殺し、カーボンオフセットを実現することができる。

スウェーデン発の気候変動に取り組むインパクトテック企業「Doconomy」は、個人や企業が気候変動について理解し行動するためのツールやプラットフォームを展開している。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、マスターカードと3社の協働で始まったクレジットカード「DO card」では、決済から買い物ごとに発生したCO2排出量を追跡し、アプリ上に表示される。発生した排出量を補填するか、地球環境にプラスに影響する行動をするかを選択できる。Doconomy社はCO2を見える化することで、気候変動を理解し、行動できるようになると考えている。

DATAFLUCTとセゾンカードが提携して提供を開始したクレジットカード「becoz wallet(ビコーズ ウォレット)」は、決済データに基づきCO2排出量を可視化できる日本初のサービスだ。自分の生活から発生するCO2排出量を知ることでライフスタイルを見直すきっかけを作り、削減が難しい排出量は森林保全・省エネルギー・再生可能エネルギーといったJークレジットの購入を通してカーボンオフセットが可能。「becoz card」を連携すると、前月とのCO2排出量の比較をすることができるほか、CO2排出について学べるサービスも利用できる。

これまでは漠然と捉えられていた情報でも、今やテクノロジーの発達によって可視化できるようになっている。今後、企業がサステナビリティに取り組む上で、透明性を保ちながら情報を開示していくことが重要になるのだろう。